上手の一寸、下手の一寸
神職がお祭りをご奉仕する作法には、細かい決まりごとがあります。
こういう式次第で行いなさいという「祭式」、
その一つ一つをこのような内容で行いなさいという「行事」、
それをこのような動きで行いなさいという「作法」、に決まりがあります。
きちんとした「作法」が行えなければ、
正しい「行事」にならず、決められた「祭式」にならない。
だから、一番の基本である作法が大事となります。
よって、神職たるもの誰もが作法を正しく身につけておく必要があります。
自己流にならないよう時々作法の乱れを正さなければなりません。
先日も、山口県神社庁に大学の祭式の先生を講師に迎えて、祭式・行事・作法(略して祭式)
の研修会がありました。
その中で、先生からこんな言葉を伺いました。
「上手の一寸、下手の一寸、鈍間の三寸、馬鹿の開けっ放し。」
これは、山形県で先生が聞かれた「障子の開け閉めの話し」だそうですが、
上手な人は、障子を閉める最後の一寸が丁寧。
下手な人は、障子を閉める最後の一寸が雑。
鈍間な人は、障子を閉めても三寸開いたまんま。
馬鹿な人は、障子を開けっ放しで行ってしまう。
作法を行う際の心得として、なるほどと思いました。
日本の伝統文化の中心である「道」の世界は、何れも作法を大事にして来ました。
そして「道」の世界を通じて、日本人の生活作法が洗練されて来たとも言えます。
お祭りを奉仕する作法ではもちろん、生活の中のさまざまな作法においても、
「上手の一寸」に気を付け、日本人らしく美しく暮らしたいものですね。