菊薫る秋
秋深まる良き季節を迎え、今年も手塩にかけて育てられた菊を奉納いただきました。本殿東側の御祈祷入口に飾っておりますので、ちょうど初宮参りや七五三参りのご家族を祝福しているかのようです。
さて、11月3日「文化の日」は、明治天皇のお誕生日にして明治神宮の例祭日。全国の神社でも「明治祭」を行います。よって元々は「明治節」であったのが、戦後占領下の影響による祝日法の改正で「文化の日」となりました。
周南市文化協会は、例年この日に「文化の日記念式典」を遠石会館で開催されます。昨年は開催されませんでしたので2年ぶりの開催で、和やかに賑やかな集いが行われました。
記念式典で、特別文化功労賞、文化功労賞、文化振興賞の表彰が行われましたが、中でも特別文化功労賞を受賞された宇多喜代子さんのご挨拶がとても印象的でした。
昭和10年に徳山でお生まれになった宇多さんは、御年86歳。俳句の世界で紫綬褒章、旭日小綬章、文化功労者と大変立派な功績を残され、現在もご健勝にご活躍の方です。
その宇多さんが受賞に対してのご挨拶で、「故郷から立派な賞を贈られてこんな喜びは無い。私にとって徳山で過ごした戦時中の体験は間違いなく後の人生に大きな影響を与えています。」と。
さらに「今私は、この国の国語と国土を守り伝えることができるのか、ということが心配でなりません。」と、きっぱりお話しになりました。
俳句の世界で言葉を大事にされてきたからこそ国語の大切さを、戦争の悲惨さを経験されたからこそ国土の大切さを痛感されておられるのでしょう。
「国語と国土」。「国語を失ったら日本人でなくなります。国土を失ったら日本でなくなります。皆さんよく考えましょう。」と大先輩から喝を入れられた思いがしました。
一流の文化人の慧眼に触れられた、とても貴重な文化の日でありました。